組織のゴールはどうやって設定するのか

組織のゴールはどうやって設定するのか

組織の空気(コンフォートゾーン)をかえるためには、組織のゴールの設定とそのゴールの臨場感を高めることが必要で、特に臨場感が高まるような言葉を使っていくことが非常に重要であることを別の記事でご紹介しました(「組織の空気(コンフォートゾーン)を変えることが成功のカギ」参照)

組織のゴール設定って、何でしょうか。組織に属していると、目標は会社から与えられます。それもゴールの一部と言えます。特に売上予算はその代表ですね。その予算は社員が設定することはあまりないですよね。会社の全体予算が部に割り振られて設定されます。つまり会社にいると、誰かが設定されたゴールを一生懸命追っかけることになるわけです。だから組織のゴール設定といってもそれはマネジメントの一部の人がやっていることと思いがちです。社員の目線で言うと、それをクリアすればボーナスが高くなるという分かりやすいゴールはありますが、その程度のゴール設定だと大きなパフォーマンスは発揮できません。そもそも他人に設定されたゴールを追いかける、強制的にやらされる、義務感で取り組むと、人の脳はできない理由を生み出すようになります。これを創造的逃避(Creative Avoidance)といいます。宿題をやりなさいと強制された子供のようなものです。しぶしぶ机に向かいますが、眠くなったり、遊びに行きたくなったり、全力でできない理由をみつけようとしますよね(笑)

ではどうしたらいいのか、組織のゴール設定のやり方をこれまでとは変えていく必要があるのです。そのやり方について、ここでは大きく2つの大切なポイントをお話しします。

1つ目は、組織のゴールは全構成員のゴールを包含するようなゴールを設定するということです。例えば、10人の部員がいる営業部があるとします。10人それぞれ、仕事で実現したいことは様々です。仕事以外の話をすれば、10人それぞれが、違う趣味を持ち、違う家族をもち、違うプライベートをもっています。つまり仕事以外のゴールも様々です。部長はこれを上手に引き出し、そのゴールに目を向け、一緒にそのゴールの実現を感じ、応援することです。部長は部下のゴールをどこまで知っているでしょうか、私が多くのマネジメントの方々を見てきた限りでは、部下は何が好きで、どんな時に喜ぶのか、分かってマネジメントしていることは案外少ないものです。そうした部下のゴールを引き出すコミュニケーションもマインドの仕組みを分かってやるのとそうでない場合は大きく結果が変わってきます。(詳細は「1on1で上司が部下のゴールを引き出す際のマインドの使い方①(臨場感)」参照)

そうして、部下のゴールを引き出していくと、そのゴールを包み込むような部としてのゴールを設定できます。部のゴールを言語化するのはリーダーである部長の役割です。部のゴールは会社から降りてくるものだと思われるかもしれませんが、それはもちろん、重要ですが、部として実現したいゴールを設定し会社から降りてくるゴールとすり合わせることも更に重要です。なぜなら、部員1人1人自分達が望むゴールを追いかけないと、創造的逃避を起こしパフォーマンスに限界ができてしまうからです。自分達独自のゴールをつくるために、その材料集めとして部員の実現したいことを聞き出して応援するということです。

組織のゴール設定のやり方の2つ目のポイントは、組織の構成員がぶっ飛んだゴールを考えて、臨場感を高めることができるような場づくりを行うということです。普段の枠を外していいので、自分達が望むぶっ飛んだゴールをみんなで考えるのです。

日々目の前の仕事に追われている時、同じような仕事の繰り返しをやっている時、新たなアイディアは出づらく、過去の延長線上のそこそこの成果しか出ません。でも多くの場合そのような状況だと思います。こんな時、3か月1回でも、半年に1回でもいいので全員が頭のリミッターを外して思いっきり自分達の実現したいこと望む世界を吐き出しあうのです。

 人の脳は自分にとって重要な世界を現実の世界として認識します。そしてその現実の世界をより強化していきます。毎日同じような仕事の繰り返しで、少ないリソースでやっているから忙しくて、時間がなくて、お客さんに怒られて、新しいことも中々できないというのが自分達の見ている現実の世界となると、その世界を維持するために情報を集めその現実を強化しようとします。よって中々現状から抜け出せないということになるのです。

 ですから、自分達が望む現状の外側のぶっ飛んだゴールを自分が社長になったつもりで考える、そんな時間は重要です。でもぶっ飛んだゴールは非日常ですから、違和感もあるし、そんなできもしないことをみんなで出すことに何の意味があるのか、という空気も沸きやすいです。ですから、その場をファシリテーションする人は、私のような外部のプロを使うというのも1つですが、社内でやるとしたら、いくつかルールを決めてやるのも手だと思います。例えば、「実現可能性は一切問わないこと」「過去のことではなく、未来の話のみ行うこと」「社員の給与、業界での活躍、人材育成、働き方、顧客にあたえるインパクト、実現する世界、などいろんな観点で自由に考えること」「お互い出す意見に乗っかってさらに大きくしてみること」などなど、こちらも脳と心の仕組みを抑えてルールを決めて、何より楽しくやることが重要です。みんなで話をしながら、そのゴールの世界の臨場感を高めていく感じです。こうしてできていたイメージを全て集め、組織のリーダーは組織のゴールを言語化します。組織のゴールは組織のリーダーが一方的に決めるものではなく、こうしてみんなのイメージを引き出してそれを言語化するのがリーダーの役割ということです。もちろんリーダーの個人的な意見も組織のゴールには含まれています。

そうやって言語化したぶっ飛んだゴールを実現するために、やるべきことを考え実行に移していくことでこれまでやってきた一見同じようなことの繰り返しの仕事もまったく捉え方や向き合い方が変わり、組織のパフォーマンスは大きく高まっていきます。

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